Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

  “冬暁寒朝”
 

 
お正月もとうに過ぎての、そろそろ次の月が間近い真冬のさなか。
二月、如月は、更衣とも書いて、更に衣紋を羽織らにゃしのげない月。

  “う〜〜〜〜。”

それでなくとも…そのご気性をその身で現しておいでか、
それはそれは鋭い印象の痩躯でおわすお館様。
熱くても寒くても等しく文句をお言いだが、
どちらかと言えば寒いのが大嫌い。
山のように綿入れを羽織ってもやっぱり寒いものは寒いので、

  『てめぇも精霊の一種なんだろが、何とかしやがれっ』

だなんて、葉柱さんへと無茶ばかり言うのも冬場のほう。
今日も今日とて、
せっかく暖まった掻い巻きから、
わざわざまだ寒い広間へと出るのが疎ましく。
几帳で囲まれた寝間から出ずの、朝寝を決め込んでおいでだが。

  「…おやかま様?」

そこへと届いた幼いお声と、
御簾をからげた柱にちょいと手を添え、
奥向きを伺うように よいちょと背伸びをする小さな影が、
お庭を背景に見えたりした日にゃ、

  「…ちっ、しゃあねぇな。」

名指しで呼ばれたからにはお返事することと、
子供へのしつけをしている最中に、
そんな簡単なことを大人が守れなくてどうしますかと。
わざとらしい溜息混じり、几帳に垂らした絹をからげると、

  「くう、こっちだ。」
  「きゃい〜〜〜っvv

声をかければ結界もほどける。
別にくうちゃんへの用心にと張ったものではないのだけれど、
寒気が届かぬようにと張ったそれ、
ぱちりと砕いて差し上げれば、
それでやっと、彼にもお館様の姿が見えるという寸法であり、

  「おやかま様、まだねんね?」
  「いんや、もう起きる。」

板の間をとてちてと駆け寄って来たおちびさん。
綿入れを敷いた寝間に身を起こしただけの蛭魔より、まだまだ小さな背丈の坊や。
一丁前に大人と同じ型のをはいてる袴のお尻から、
ふかふかで結構立派なお尻尾を出しており。
この小ささでも一応は、伏見の稲荷の使わしめ、
天狐の眷属だったりし。

  “いや、まだそこまで確定って訳じゃあねぇんだが。”

それでも、野にいる狐が神通力を使える身となるには、
そりゃあ途轍もない歳月と精進が必要で。
こんな屈託のない、年端も行かない子ギツネが、
なのにここまで見事に人へと変化
へんげ出来ること。
それだけをもってして、彼が特別な血統であることは明らかで。

  「寒い寒い? くうを抱っこすえば、ぬくといよ?」

かっくりこと小首を傾げ、
大胆にもお館様のお膝へとちょこり座るのが、

  「〜〜〜〜〜っ。」

ああどうしよう、この俺様がこんな感情を持つだなんて。
甘いものは苦手だったはずなのに、
ちまちまするもんは何か苛々して目障りだったはずなのに。
繊細なもんは気ぃ遣うのが面倒だから、
どっか遠ざけるか さもなくば、
さっさと壊れちまえと頭上に振りかぶってしまいたくなる衝動に、
ついつい駆られる短気者だった筈だのに。(…う〜ん)

  「うに?」

キョトンと大きく眸を見張ってから、
にゃは〜〜〜vvなんて見上げてくる つぶらな瞳の
瑞々しい潤みようが何とも言えずで、

  ――― ああもう、この子は…っ!

ぎゅむっと抱き締め、見えないが残ってるままの毛並みへと、
思う存分の頬擦りを敢行するお館様であり。

  「ほんっと、お館様って寒がりなんですよね、進さんvv」
  「…。」

今のはそれだけでもないと思うのだが、主よと。
進さんの方が珍しくも的を射ていたりする朝ぼらけ。
寒いからとなかなか起きて来なかったお館様が、
最近ではお昼前にはしっかと起き出すようになったのは、
こんなやり取りを、飽きもせんと
毎朝繰り広げているからだったりするのだそうな。


  ――― 今年の冬は暖冬でもあるしな。


  ふ〜ん? それで?
(苦笑)




  〜Fine〜 07.1.31.

  *おかしい。
   膨らませたネタはどこさ行っただという展開で終わってしまった。
   いやはや、だって、
   今年は暖かいと言われていつつも、
   手の先とかがかじかむんですもの。ぱっくり割れてもいるんですもの。
   キーボード打つのも結構辛いです。(ううう…。)
   何とかリベンジしますからね?(誰に言うとるのだか…。)

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